亀山の夏、黄金の夏

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亀山の夏、黄金の夏

 もうすぐ一学期も終わる七月の中ごろ。  制服は夏服になっていても、暑いことは避けられない。  亀山秋人は夕方の通学路を家に向かって汗をかきながら歩いていた。  高校一年にして、身長百八十センチあり、ガタイもいいため、柔道部など部活勧誘がやってきていたが、秋人は全てそれを断った。  寡黙であり、無骨であり、不器用な彼はクラスの誰もが『漢』であると認識していた。  そんな彼も気候には敵わないのか、汗を額にかきながらのしのしと歩を進めていた。  いつも変わらぬ帰り道。  見慣れた景色はつまらない住宅地に差し掛かっている。  毎日同じ事の繰り返しに、秋人は溜息を零す。 「ただいま」  自宅に帰り着くと、家飼いをしているペットの柴犬のチャオが飛びつくように出迎えてくれた。 「おー、チャオたん~! ただいまーぷぷぷぷぷー!」  その巨体から出すとは思えない猫なで声を発しながら、愛犬に顔面を舐めまわされている秋人の顔は幸福に満ち満ちていた。  彼が部活を断り続ける理由が、この愛犬チャオである。 「散歩行きましょうね~! 着替えるからちょっと待ってねー!」     
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