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足元に絡み付いてくるように飛びつくチャオを気遣いながら、二階の自室に引っ込んで制服を脱ぐ。
すぐにラフな普段着を着こんでから、一階に降りると、母親と出くわした。
「おかえり」
「おう、散歩行って来る」
「じゃあ、ついでにコンビニでドッグフード買ってきて。切らしてたのよ」
「おう」
犬のリードを取ってくると、チャオが反応し、激しく跳ねながら秋人の足にまたも飛びつく。
散歩に行くときの手提げ袋に、犬の糞を回収するとき使用するビニール袋を詰め込んで、ショルダーバッグをひっかけて散歩へ出かけたのだった。
亀山秋人は、大の動物好き……と云うか、可愛い物が大好きだったのだ。
自身の見た目からは似合わない乙女チックな趣味である事は理解していたが、だとしても好きなのだからしょうがない。
ともかく、最近飼い始めたチャオに、秋人は夢中だった。
毎日、帰宅してから一時間ほどのチャオとの散歩を日課として、自宅周辺を歩いて回っていたのだ。
自宅周辺は、住宅地であるが、その周囲には公園やら、神社、学校や遊歩道もあるので、犬の散歩コースとしては申し分なかった。
……申し分、ないとは思うのだが……。
こうして毎日同じ風景を見て散歩をしていると、どうにもつまらない。
別段、都会でもないとある市の住宅街だ。
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