亀山の夏、黄金の夏

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 だが、秋人はその女性、いや、年齢的に少女と表現するべきか――。  彼女を知っているのだ。  彼女は、秋人のクラスメート。アメリカからのホームステイで留学に来ているシャルロット・フィリップスだ。  秋人はまったく話したことなどない。  そもそも、クラスの女子と話したことがない。  寡黙で怖いと思われているらしく、女子は秋人にあまり近づこうとしないからだ。  なので、彼女の事は同じクラスメートの金髪、くらいにしか知識がない。  家はこの辺りなのだろうか? あの一緒にいる男はなんだろう。  少し興味が湧いた秋人は、様子をうかがってみた。  シャルロットは、まだ制服のままで帰宅した様子が無い。今、帰宅途中なのだろうか。  男の方は、日本人で見たところ二十歳かそこらの大学生のように見える。  御互いにスマホを見せ合って、なにやら騒いでいる……というか、どうも険悪なムードのように見える。 (痴話げんかか?)  だとしたら、ほおっておけばいい。  しかし、これがナンパ目的の男であって、シャルロットが迷惑しているのだとしたら、助け舟くらいは出してもいい気がする。  暫く様子見と行こうと思ったその時――。 「きゃわわん! きゃわわん!」     
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