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着替えも早々に一階へと降りると、麦茶を飲んでいるシャーと彼女をどう扱っていいのか分からない母親がギクシャクと所在なさげにしていた。
「ちょっと、秋人! 彼女を連れてくるなら先に連絡しなよ!」
「……彼女じゃない。クラスメートだ。前に話したろ。ホームステイで来てるアメリカ人がいるって」
お約束な母親の反応に秋人は溜息を吐きながら説明する。どうやらシャーがアメリカ人なので、まともに彼女に声もかけられず、舞い上がっていたようだ。
「それ飲んだら、早速行くか」
シャーが冷たい麦茶を飲んでいるのを見ながら、こんな光景を我家で見るとはと、内心また夏の幻なのではと疑っていた。
しかし、シャーがコップに口付け、細い喉をゴクゴクといわせるその姿は事実そのものなのだ。
「ハイ。お茶、ありがとうございまシタ」
「あ、ハイ」
結局終始呆気にとられたままの母親だったが、それをほっといて、チャオの散歩道具を準備する。それを見たチャオがパブロフの犬よろしく、すぐさま散歩の体勢になる。散歩バッグに飛びついて、「きゃわわん!」と吠えては秋人の周囲を駆け回る。
「よぉーしよしよし! 散歩いこーなぁ、チャオ~」
飛びついて喜ぶチャオに、ついシャーがいる事を失念して、いつもどおりの猫なで声を出してしまった。
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