亀山の夏、黄金の夏

5/11
前へ
/201ページ
次へ
 チャオが吠えた。秋人が立ち止まっていたせいで、早く行こうと急かしているのだろうか。  その鳴き声にシャルロットと男がこちらに顔を向けた。 「ハイ! アキト!」  シャルロットが明るい声でこちらに駆け寄ってきた。  自分の名前を呼ばれた事に驚いた秋人は、そこで立ち止まっているしかなかった。  シャルロットが秋人に駆け寄ると、男のほうはバツが悪くなったように、小さく舌打ちしてからその場を去って行った。 「は。はい。しゃるろっとサン」  慣れない挨拶をして、硬い表情で秋人はシャルロットへ手を上げた。 「助かりましタ! アイツ、ネンド草かっタ!」 (ネンド、草、刈った?) 「アタシ、あの人知らないケド、ガールフレンドになれって、ヒツコイ」 「……あぁ、ナンパされてたのか」  どうも先ほどのネンド草は、めんどくさかった、と言いたかったらしい。 「アキトが来たから、ヨカッタね!」 「いや、俺は何もしとらん」 「イヌ!」 「チャオだ」 「チャオ、名前? ウケるー!」 (なぜ、ウケる)  シャルロットは、しゃがみこんでチャオの首元を撫でながら、楽しそうに笑っていた。  こうして、改めて近くで彼女を見て分かったが、シャルロットは小さい。  その身長は百五十センチくらいしかないように見える。     
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加