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「お前と好みが一緒じゃないと、恋人になれないってワケじゃないだろ。オレの好きな漫画、全然読まなかったじゃん」
「ご、ごめんなさい」
「謝んなよ。好きなもんが違うのは、なんにも影響しねーって話」
「ありがとう」
ふわりと彼女は笑った。彼氏もニッカリと笑顔を見せて二人は夕方の校舎を後にした。
「週末、どこ行く?」
「どこでもいいよ。一緒なら」
「オレも」
二人はそっと指を絡めて手を繋いだ。体温がゆっくりと伝搬して、それがお互いの心臓を高鳴らせていく。それがどうしようもなく幸せで、二人は空に飛行機雲が出来ているのも気が付かなかった。
「じゃあ、本屋に行かない?」
「漫画も小説もあるしな」
「うん……。さっき読んでた小説ね。書籍化するの」
「へえ、すげえな。オレの好きな漫画も単行本一巻発売するぜ」
「すごいね、偶然!」
赤みが差した互いの頬はゆるりと持ち上がって、白い歯を見せあった。
きらきらと夕日が黒い髪の毛を輝かせ、カラメル色の世界に溶けていくと、些細な奇蹟が運命のようにも思える。
「じゃあ、本屋で」
「うん。約束」
「ついに一巻発売かぁ。ヒロインの女の子、マジで可愛いんだよなぁ。この日を待っていたぜ」
「そ、そうなんだ」
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