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ウェブ漫画で人気を博したその作品は所謂ハーレム物という奴で、冴えない男の子のところに、可愛らしい女の子が押し寄せてくるというちょっぴりエッチな描写がある漫画だった。
やっぱり男の子ってこういうの、好きだなぁと彼女は視線を足元に落とす。
影が伸びている。くっついている二つの影が。
やっぱり彼氏も、私だけじゃなくて、沢山の女の子にチヤホヤされたいのかな、なんて思ってしまう。でも、そんなことを言ったら嫌われちゃうかもしれないなと、彼女はうつむいたまま歩いた。
駅のホームで二人はいつも別れる。方角が真逆だから。
一番ホームと、二番ホーム。背中合わせになっているホームで、二人は向き合い手を振りあう。それがなんだか、切なくて、どうしてずっと一緒に居られないのだろうと電車の中で想いを通じ合わせるのだ。
彼氏は自宅に帰ると、すぐにパソコンを開く。
彼女も自宅に帰ると、すぐにパソコンを開く。
彼氏はテキストソフト。
彼女はペイントソフト。
彼氏は自身に似つかわしくない少女小説を描き、彼女は不釣り合いなエッチな漫画を描く。
今週末には書籍化されて本屋に並ぶ。
それを手に取ってくれる人が互いに想いあっていることを当人は気が付いていない。
夕方の飛行機雲のように。
彼氏は、愛する彼女のために小説を描き、彼女は愛する彼氏のために漫画を描く。
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