「なんでここにいるの馬鹿」

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「なんでここにいるの馬鹿」

通学路にあるポストの前に、聖司は立っていた。私に気がつくと手を振って合図してくる。 「遅かったね。2人して遅刻だ」 いつも通りに話しかけてくる彼に戸惑った。 「ごめん」 返す言葉が思いつかず、謝っておく。自然と2人並んで歩き始めた。街路樹の飛び出した枝に色づいた蕾がついているのを見つけた。もうすぐ、春が来る。 「確実に遅刻だけど、先生になんて言い訳する? 」 気だるげに聖司が聞いてきた。何も考えられない。何も考えたくない。ただ黙って歩き続ける。 「え、もしかして無視? 」 顔を覗かれても一点を見つめていた。今までにない空気を察したのか、しばらくすると聖司も黙って歩いた。静かになった彼が気になり、一度隣を確認する。同じ学校の制服に、白のリュックサック。特に普段と変わったところはない。小学校の頃から変えていない待ち合わせ場所に、何食わぬ顔で待っていた。一瞬、今まで見たものが走馬灯のように流れる。聖司だ。私の幼馴染の、中山聖司だ。確認した現実に、目線を自分の足へと向けた。 「あれ?どこ行くの? 」 交差点で、学校とは違う方向に曲がる。 「今日は学校行かないの」 うつむいたまま答えた。 「サボり?僕も一緒に行こうかな」     
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