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でもそんなのはほんの一瞬の気の迷いで、部屋に入ると馴染みの仲間が既に盛り上がっていた。普段の幸彦の部屋はちょっと怖いくらいに殺風景で、暮らしの匂いがしないから、なんだかかえって安心した。
このなかの誰もわたしの気持ちなんて知らないし、今さっきの出来事だってこの様子なら気づいていないに違いない。だから今日はこの男所帯の飲み会で誰よりも飲んでやろうと心に決めた。
だけど、失恋の動揺を隠すために煽るハイネケンは年々味が薄くなってるのに加えて、わたしの精神衛生の都合でびっくりするくらい味がしない。装飾の少ない男部屋に映える安っぽい緑色がわたしの周りにどんどん増えてゆき、惨めなわたしを笑っていた。
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