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「女が吸うには重すぎんだよ」
「なんすか、かっこつけちゃって。不良のくせに」
「不良とかそういう問題じゃねーよ」
「なにそれ、変なの。むかつく」
煙を吐いて困ったように幸彦がわらう。あ、このわらい方がいちばん最初に好きになった笑顔だ。だけど今、そのわらい方がいちばんわたしを傷つけた。
そんなやっかいな子供を見るみたいな目で見ないでよ。バカにすんなバカじゃないんだから。
「へっへっ、実はあと19本もあんだよね」
「ばか」
ひらがなの発音であやすように罵倒された。そればかりか得意げにひけらかした手の中のセブンスターも、子供からおもちゃを取り上げるみたいに奪われてしまった。もうこれは友達というよりも本当に子供扱いだ。だからバカにすんなってバカじゃないんだから。
わたしは幸彦がわたしのことを頑に友達としか思ってないことも、そのわらい方も優しさもなにもかもがわたしを牽制するためのものだってことも、痛いくらいにわかってるんだよ。だからこれ以上わたしをみじめにしないで。
「俺が悪かったよ。せっかく志水が買ってきてくれたんだもんな」
「……」
「最後の一箱だ、大事に吸うよ。ありがとな」
「…………バカ」
とどめを刺されたと思った。可哀想なのはわたしだと気づいてしまった。
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