アラミタマ① ~十三日~

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「は、はあ。職業病みたいなもんですかね」 「だから、私鏡がある場所ではいつも何かに見られているような感覚を持ってしまって落ち着かないんです」 「ああ、分かるような気がします」  ……と、答えたが正直、ちょっとばかり神経質じゃないだろうかと内心は思っていた。ナルシストのようなものだろうか。  ところでそれと月の話とどうつながるのだろう。  オレは同意を示しつつ、言葉の続きをじれったく待っていた。 「そういう視線のようなものを、月から感じてたんです……」 「えぇ? 月ですか?」 「……誰かに見られているような……そういう感じをバスを降りてからずっと感じてました……。誰かにつけられているみたいな……。それで、振り返ってみたらだれもいないんですけど、空にぽつんと浮かんでいる月が、私の事を見下ろしているみたいに、感じてました」  そういう百田さんに「なるほど」と相槌を打ちながら、オレはこりゃ彼女にするとめんどくさいタイプの女性だなと考えていた。  いわゆるメンヘラタイプというか、思い込みが激しいというか、神経質すぎるんじゃないかと思ったのだ。 「ほかには、特に?」 「はい……」     
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