アラミタマ① ~十三日~

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「そうですか。協力ありがとうございます。それじゃすぐに自宅まで送りますんで、このままお待ちください。運転手用意しますから」  そう言って、適当な警官に百田さんを送らせるように伝え、パトカーを走らせた。 「どうだった」  五十嵐警部がタバコを咥えてオレの傍に寄って来た。オレは愛想笑いを浮かべて、「びみょーッスね」と返した。 「あの女性が乗ったバスとかも調べましょう。証言の信ぴょう性がちょっとはっきりしないッス」 「よし、そっちは俺がやる。お前、過去の行方不明事件の資料を調べて、今回の件に関わりがないか洗っとけ」 「ハイ。マスコミには発表するんですよね?」 「隠しようもねー事件だからな。署長がネクタイ絞めてたよ」 「ハハ、そのまま首絞めてくれませんかね」  そんな悪態をつきながら、オレと警部は動き出した。この警部の下で働きだしてから、オレもずいぶん口が汚くなってきた気がする。  人は環境で流されていくものなんだろうな。と、自分の変化自体にも、オレは苦笑いを浮かべるのであった。
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