24人が本棚に入れています
本棚に追加
ノックの音がして、足をすぐに止めた。
音のした左側の助手席に五十嵐警部が座っていて、そちらの窓をノックする少女がいた。
着ている制服からしてこの学校の生徒だと分かるが、一体なんだというのだろうか。
五十嵐警部が窓を開け、「なんだ」と訊ねるが、少女はにこにこと笑みを浮かべて、「乗せてください」とだけ言った。
オレは警部と顔を見合わせたが、警部が頷いたので、後部ドアのロックを解除した。
警部は無言で顎をくい、と動かして少女に後部座席に乗るよう伝えた。
少女はそれに頷いて素早く乗り込み、そしてまるで身を隠すように座席の下にうずくまったのである。
奇行にも思えたが、ひょっとすると、この学園内では見つかってはいけないのかもしれないと考えた。
「カラオケに行ってください。駅前のカラオケ、そこでお話ししたいことがあります」
少女が後部座席から言うので、オレはまた警部を見て指示を待つ。
「よし、車だせ。歌いたくなってきた」
五十嵐警部の言葉に、オレは今度こそアクセルを踏み込んだ。M学園の校門を抜け出て駅前のほうに車を走らせる。
車が走り出してから、五十嵐警部は、改まった様子で顔は正面を向いたまま、バックミラー越しに少女に聞いた。
最初のコメントを投稿しよう!