アラミタマ③ ~十二日から十八日~

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アラミタマ③ ~十二日から十八日~

 少女失踪事件。巷ではそんな名称がつけられたここ最近の女性の失踪事件は今まさに大きく動き出すことになった。  事件としての発端は、今から三年も前になるか。  当時十六歳だった高校一年の少女が行方知れずとなった。少女は仮にAとしよう。少女Aはその行方不明になる前に失恋をしたらしく、自室のパソコンの履歴で、彼女のSNSアカウントの日記に傷心の想いを綴ったものが見つかった。  それによると、友人に裏切られたとか、好きな人を奪われたという内容で、妬みと悲しみ、そして怒りの滲んだ文面が赤裸々に書き込まれている。  最初は、そういった経緯から行方不明も色恋沙汰のもつれによるものかと考えられた。  聞き込み調査も行われたようだが、その思い人である同学年の少年も、少女Aの友人も、彼女の失踪に関してはまったく見当もつかないと言った。  その少女の消息が途絶えた晩は、美しい満月の夜だった。  実によく覚えている。なぜ、覚えているかなんて簡単だ。  ――それが最初のヒトゴロシだったからだ。  ひょんなことから、引力を得たみたいだった。勝手に獲物が釣られてやってくるみたいに、殺しやすい少女が吸い寄せられてくる。     
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