アラミタマ③ ~十二日から十八日~

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 強烈な死臭を纏った人間を見付けたのだ。これは人を殺したヤツの臭いだとすぐわかった。同類だからというのもあるだろうか。  だが、その標的の姿を見た時、正直なところ目を疑ったし、鼻を疑った。  相手がそういう人物だったからだ。  結論から言うと、その死臭を纏った人物は知っている人間だった。 「――百田サクラ?」  街の通路で雨に濡れ途方に暮れたように立ち尽くす女性は間違いなく、事件の第一発見者の百田サクラで間違いない。  そうか、彼女は死体の第一発見者だ。死臭が付いていてもおかしな話ではない――。  そう考えて、いやそうじゃないと、すぐさま己の中で否定する。  なぜって、それはそれこそ、事件発生直後に彼女と会話した時には、死臭を纏っていなかったからだ。彼女は碌に死体にも近づいていないのだろう。  だというのに、なぜ今日、百田サクラにこうも強烈な死臭が纏わりついているのだ?  ――漠然とした違和感を感じながら、標的を明確にしたい気持ちが体を動かしていた。  雨に濡れる百田サクラに声をかけて様子を見ようと思ったのだ。 「百田さんですよね?」 「…………っ?」     
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