アラミタマ③ ~十二日から十八日~

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 その隙に百田サクラは拘束から離れ、見知らぬ男と共に逃げ出していった。 「なっ、なんだと……」  足元に転がったビニール傘を見てこれで殴られたのかと分かった。あの男とサクラはどういう関係だろう。そもそも本当にあれはサクラなのか?  たった今、目の前で起こったことが頭の中で整理できずに、オレは雨の中暫しそこで立ち尽くすのだった。  なんにせよ、やることは一つだ。  殺人犯を見付ける――。  それは、連続殺人鬼であり、刑事でもあるこの三井ツカサの役割なのだ。  オレはまず、慌てずに冷静になり、第一発見者の情報を調べなおし、百田サクラの連絡先に電話した。  すると、あっさりと彼女は電話に出て、こちらの要望にも応えてくれた。  明日、駅前のレストランでお話したいのですが――。  返事はOKということだった。  ――やはり、オカシイ。彼女は二重人格なのか? つい先ほど乱闘騒ぎになりかけたオレと、こうも素直に話せるだろうか?  二重人格だとしたら、死臭はどう説明する?  まさか、あの殺人の日から今日までの間に、彼女は別の人の死を経験したというのか?  いや、ありえない。――だとしたら、答えは――。  百田サクラは、二人いる――?     
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