アラミタマ③ ~十二日から十八日~

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 ……それはレストランでサクラと面談中に、オレの手を傘で叩いて、殺人犯を逃がした青年もレストランにやってきたことだ。印象としてはパッとしない抜けた感じの男だった。ヘラヘラとぎこちなく笑う姿が不気味にも思えた。  まるで偶然のような態度に見えたが、本当のところはどうだか見抜けない。調査をするとき、間抜けを演じるのは効果的な手段の一つだからだ。  よもや、こいつは全てを知っているのかと、オレはその時、人生最大の緊張を感じて、間抜けそうな青年を凝視していた。  話を聞いてみたかったが、今は『発見者のサクラ』もいるし、『殺人犯のサクラ』とどうつながっているのか分からないため、変に行動が起こせない。  気が付くと、青年は姿を消していた。  オレは、場合によってはあの青年も消す必要があるかもしれないと考えた。百田サクラ同様に――。  今後の動きは、サクラが中心になる。  そう思った矢先に、とんでもないタレコミと情報が重なることになり、捜査班は一人の男性教諭を逮捕するに至った。  殺された四谷ココロは妊娠しており、またDNA鑑定により、その相手の男が担任の教師であったことが発覚したからである。  取り調べでオレは、こいつは違うと真っ先に分かった。  死臭が全くしないからだ。  八房という教師は、このコロシに関わっていない。間接的にはあるかもしれないが、それはオレの興味の対象外だ。  やはり、間違いない。     
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