アラミタマ④ ~二十二日・新月~

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アラミタマ④ ~二十二日・新月~

 六月二十二日、N警察署内にある留置所に入れられているM高校教師である八房を取調室にて尋問を行った。  オレは記録係に努め、尋問官は五十嵐警部が担当したのだが、八房の言い分は大体こうだった。  四谷ココロを強姦したことは認めるが、殺害はしていない。  オレはその言葉を信じた。なぜなら、八房からは死臭がしないからだ。こいつは人を殺したことがない人間だとオレには分かる。もっとも、そんな事を誰かに言ったりするわけもないが。  八房のDNA鑑定と、四谷ココロの解剖結果から出たDNAが一致し、教師にありながら教え子に手を出したこと、それも合意のもとにない強姦であったことなどを含め、彼は無実というわけにはいかなくなっていたが、殺人だけは犯していないらしい。  五十嵐警部は取り調べ後、署内の喫煙スペースで煙に包まれながら何やらずっと考え事をしているらしい。  おそらく、八房の供述の信ぴょう性を見極めているのだろう。実際のところ、殺害時刻であった時間に八房はアリバイがないし、容疑者としてはかなり黒だ。八房の家を捜索したところ、女子高生に群がられるだけの内容のマンガが多数見つかった。いわゆるハーレム系ってやつだ。     
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