アラミタマ④ ~二十二日・新月~

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「おう、その『そっちの事』っつーのはよぉ。『どっち』の方なら調べたんだ?」  なんだ、どういう意味だ?  オレは急に、この先輩刑事の言葉が頭でぐねぐねと変形するように掴み切れなくなった。あの時の状況の事をしっかりと思い出せ。  そうだ、たしか――。  高校に向かう最中、百田サクラの話題になって……、昔彼女はストーカーの被害にあっていたというような事を話した時だ。 「いや、だから、『そっち』ってのは第一発見者のことだったんでしょ。オレが調べたのは、四谷ココロの事です」  オレはなんだか、百田サクラと名前を口に出すのが嫌な感じだったので、『第一発見者』という言い回しを使った。 「あぁ。そうか。『どっち』はガイシャの方って意味だったんだな」 「……なんスか? そこが点がつながらないトコだったんスか?」  なんだ……? 何を気にしているんだ警部は。……気味が悪い。気色が悪い。そんな感じが心の根っこあたりにふつふつと浮かんできてしまう。だが、オレはそれを表に出さぬよう、『普段』らしさを装った。 「お前、百田サクラと会ったろ。十六日だ」  ヤニくさい息が重くまとわりつくようだった。 「は? ああ、はぁ……会いました、レストランで。何か思いだしたことがないかと思って」 「だからなんだよなあ~……」     
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