アラミタマ④ ~二十二日・新月~

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「だから、なんスか?」  オレは内心イライラを押さえるのに必死だった。この五十嵐警部の口調は、どうにもねちっこく、取調室で犯人相手にするときと同じものだったからだ。  疑われているのか……? いやいや、まさか。そもそも、今回の事件はオレがやった連続殺人とはまったく無関係なのだ。つながるわけがない。四谷ココロを殺したのはオレではないのだから、堂々とすればいいのだ――。 「お前、第一発見者の事を、調べてるじゃねえか。なんで『そっちは調べてませんでした』なんて言葉が出やがったんだ?」 「……いや、だって、あの時五十嵐さんストーカー事件の事をいうから……」 「じゃあ、あの時のお前の『そっちを調べてなかった』って意味は、『四谷ココロのストーカー事件』を調べていたから、『百田サクラのストーカー事件』には手をつけなかった。こういう意味か?」  ――しまったと思った。これは、誘導尋問だ。オレは今、完全に追い込まれたと思った。  そして、不自然な発言をしたことをもう訂正するには遅いということを知り、オレはそのまま黙り込んでしまった。     
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