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憑りつかれている人間は、まったく自覚などない。我が体を拝借している時は本人の意識はかき消えているし、我の行動中、バレるような事態になれば、組織の人間が記憶を改変し、つじつまを合わせてくれるからだ。
我は妖怪調査のため、早速行動に出る。準備を整えてからまた窓を開いた。
まずは現場を確認することだ。相手が強い妖気を持っていればまだ痕跡を確認できるかもしれない。
我は雨の降る真夜中の街へと、窓から飛び出した。
その跳躍は数メートルを軽々と跳び、さながら忍者のごとく、人家の屋根を次々に飛び越えていく。雨が体を濡らすが、そんなものは後でいくらでも蒸発させることができる。
現場の位置は把握している。ここからそう遠くはない。物の十分ほどで着くだろう。
いつかの屋根をトントンと飛び越えていくと、閑静な住宅地が見えてきた。確かここの一画が現場のはずである。
やがて目的の場所を発見した我は、静かにコンクリの上に着地した。
そこにはもう凄惨な事件があったとは思えないごく普通の光景が佇んでいた。暗闇に包まれ、しとしとと降る雨音だけが響いている。
我はぴりりと耳を立ち上げて、妖気を感じ取るために、精神力を静かに高め始める。
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