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さわさわと濡れた髪の毛が乾いていき、まるで気流に乗ったかのように逆立つ。さながら、その姿は炎を纏ったようでもあり、かつて妖怪が信じられていたころ、人間たちが人魂だとか狐火だとかと空想した姿のようだった。
己の気を周囲に張り巡らせて、現場に残る思念をかき集めて行けば、ここで行われた犯行が妖怪がらみなのかは直ぐに分かる。
結果としては黒だった。
やはり、ここで行われた殺人は妖怪によるものであった。微かに残る妖気がこの場であった出来事を逆再生映像のように、ノイズ交じりで脳裏に伝えてくる。
「……感じる。ヒトクイの感触だ」
脳裏に映し出されてくる記憶の映像は、この『場』が記憶している残留思念によるものだ。
それは少女が襲われ、何かに一瞬にして腹を破かれるという刹那の映像だった。明らかに人間業ではない、制服姿の少女を瞬く間にして貫いた黒い影。柔らかそうな乙女の腹部にそれは飲み込まれていくように突き刺され、へその少し下をぶちりと裂いた。
そうして真っ先にその中身をつかむと、力任せに引っ張り、引きちぎった。
どろりとした管のようなものが垂れていて、乱れた映像でははっきりとはそれを確認できなかったが、それはおそらく子宮で間違いなかっただろう。血にまみれたそれはまるで何かの糠漬けのようにも見えた。
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