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雨に絡まれるようにして飛び回り、我は侵入地点までまっすぐに向かった。雨が降っていたよかったとも思った。こんな日は人目をあまり気にしないでも済むからだ。
雨の降り続ける深夜三時、わざわざ外に出てみようと思う人間は少ない。
我は多少大胆にスピードを上げて、目的の場所を目指した。
『組織』から担当を任されたこの街に入り込んだ無粋な輩に示すように。
ここは我の領域なのだぞと伝えたかった。我は妖気を振りまきながら、街を跳ぶ。警戒しろ、この街で狩りをするならば覚悟しろと、外来に布告するために。
我々妖怪は、精神的側面に大きく左右される存在だ。だから、圧力は力、腕力などよりも、心や感情に与えるのが効果的なのだ。
それはどんなアヤカシであろうとも変わりない。幻想の存在は、何者かに存在を感じられてこそ、生きていけるのだから。
やがてたどり着いた侵入場所は、とあるビルの屋上のようだった。ここまでくるとかなり人もいる。駅前に近いこともあり、二十四時間営業のコンビニや居酒屋には人工的な寒い光が雨に反射していた。
ビルはそういった繁華街にあり、中にはカラオケボックスが入っている。地下は居酒屋のようだが、このビルはカラオケだけが入っているようだった。四階建てのビルは明かりが灯っていて、カラオケでオールナイトをしている人間がいるのだと分かる。
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