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流石にびしょ濡れのままでは怪しまれるので、身だしなみを整えてから調査に乗り出す。いつどこで人目についても問題ないように、だ。
「かなり人の気配が多い。こんなところから侵入してきたのか」
普通、人目の少ない処から入り込んでくることが多い妖怪に、今回の侵入者の異質さを感じていた。
夜でもネオンで明るい繁華街は、妖怪にとってはあまり好ましい場所ではないのだ。
我は人目を避けるように表通りから外れて、ビルの中へと入り込む。そのまま、内部から上階を目指していく。屋上への階段は締め切られていたが、そんなものは何の障害にもならない。何者かに察知されないようにだけ気を付けて、我はさっさと屋上へ駆け上がった。
屋上は水たまりがそこかしこにできていた。
結界をゆがめ、入り込んできたヒトクイ妖怪がまず足を踏み入れたのがここらしい。
殺人現場同様に残留思念を探るも、流石に日が経っているので、大した情報は得ることができなかった。
唯一脳裏に浮かんだ光景は、満月だった。
その日は良く晴れていたらしく、立派な満月が空に浮かんでいたのだ。
月、満月。
月に由来する妖怪は多い。古来より、月には様々な言い伝えがあるからだ。かの竹取物語も、今や幻想存在としてかぐや姫が妖怪として存在しているのだから。
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