クシミタマ② ~十八日~

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 満月の晩、すなわち九日からもう九日は経過しているのだが、歯がゆくも目標である桂男の気配はつかめていない。雲外鏡に調査依頼を出しておいたが、それも随分と手間取らせたようで、今日になってやっと正体が判明したのである。 「新月は六月二十二日、土曜日。つまり後、四日後になるかな」 「二十二日か……ヤツが次の食事を行う絶好の機会ということだな……」 「現行犯で抑えるつもり?」 「網ははっている。行動に移るタイミングが分かれば仕掛けやすい」  これまでに己の領域には妖気を振りまき、縄張りを示すように存在を示してきた。それは単にこちらの縄張りで好きな事をするなという警告だけにはとどまらない。己の妖気に触れたアヤカシがいれば、我が監視に引っかかる。これを桂男が警戒しているのは分かっているが、この街に住む妖怪は我一人なわけではない。  数多の下等妖怪や霊魂がその網を使って我に知らせを寄越すようにしている。  捜査とは結局のところ、数なので、一般市民(ヨウカイ)の協力が不可欠なのだ。そのあたりは妖怪も人間も変わらないというのはなんとも皮肉なことだ。 「情報助かる」 「なに、等価交換さ。で、第一世代の妖怪人間のほうはどうかな」 「その、妖怪人間という呼称は確定なのか。好みじゃないんだが」 「いいじゃないか。昭和臭くて」  ニタリと笑う鏡の中の自分を見つめ返して、我は少しだけ眉をしかめて見せる。     
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