クシミタマ② ~十八日~

4/11
前へ
/241ページ
次へ
 言った通りで『妖怪人間』という響きが好みじゃなかった。  雲外鏡の言う『妖怪人間』とは、我ら組織がこの先の社会に馴染んでいく為の一大計画、人間との完全なる同居生活の足掛けとなる共存計画から生まれた人間と妖怪の間の子である。  と言っても、妖怪と人間の間で子をなすわけではなく、人間の胎児に妖怪の種を埋め込んでみるという実験であった。  妖怪は、子作りなどをしない。人間の認識が生み出した空想が消えずに残る限りは妖怪は世界に残り続けるし、また生まれ続けもする。  しかし、今という時代において、それでは妖怪は滅亡するより他になかった。年々人間の妖怪に対する信仰は失われつつあり、数多の妖怪がその力を失い始めているわけだ。  そういった妖怪をまとめて、組織を作ったわけだが、妖怪という種を存続させるためには、人間を利用するしかないため、なんとか人間に空想と信仰を強く持たせるための影響力を与えやすい存在を生み出す必要性があった。  そのための、第一世代として、生まれた妖怪人間がこの街に暮らしている。無事に成長した妖怪人間は現在十六歳の少女であり、特殊な影響力を周囲に与える個体として本人の知らぬところで効果を見せていた。     
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加