クシミタマ② ~十八日~

5/11
前へ
/241ページ
次へ
 その少女は人間の持つ、集合的無意識を強く反応させる影響力があり、周囲の人間の無意識をコントロールできるほどであった。  分かりやすく言うと、つまり妖怪人間が念じた事柄や、想像や空想したこと、それに願いや祈りが、実現しやすい状況を組み立てることができるのだ。  例えば、妖怪人間が平和を望めば、どれだけ周囲に争い事があろうとも、徐々にそれは角を落とすように丸みを帯び、人の心を変容させていく。すると、争おうとしていた感情を持った人間が徐々に闘争心を無くしていくのだ。  逆に、妖怪人間が毎日を退屈だと思えば、周囲にどんどん問題が発生するようになる。やがて、波乱に満ちた世界が妖怪人間を包むという具合だ。  最初は非日常や、超常現象を否定する人間も多かろうが、妖怪人間が周囲の人間に、異常を信じるように伝搬させれば、種の根源にある集合的無意識が矛盾を自動的に修正するように働きかける。  この実験が成功であれば、妖怪人間が空想することで、日常は非日常を受け入れるようになり、妖怪は社会に馴染んでいくという計画となっている。  まだ個体数の少ない妖怪人間だが、いずれは数を増やしヒトとアヤカシが共に暮らせる世になるであろう。  妖怪人間自身も知らぬ内に、この世を作り替えていくのだ。     
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加