クシミタマ② ~十八日~

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 宿主は何気なく用を足した事を自覚する。こちらは、完全に意識を遮断することなく、宿主の様子を窺うことも可能なので、宿主が何か奇妙さを感じたらすぐに記憶の修正を行うつもりでいた。  スマホを取り出すと、チャットアプリを開いて、何か連絡が来ていたことに気が付いたらしい。  アプリを開くと、仲間のメッセージチャットが続いていて、自分はその流れに乗りそびれてしまっていたことにハっとなる。 「ちょっとニュース見てよ!!」  そんな一言目から始まっていた。  続くチャットは「勉強しろ」という突っ込みであった。  現在時刻、六月十八日。九時半――。  宿主はチャットのニュースの事が気になったのか、スマホを操作し、ネットのニュース記事の最新情報を確認した。  そして、酷く驚いたらしい。  その記事の見出しはこうだった。  ――女子高生殺人事件、容疑者として担任の教師を逮捕――。 「えっ」  宿主は驚愕の声を零した。  我も内心、「ほぉ」と興味を持った。女子高生殺人事件の犯人は妖怪桂男なのだから。その容疑者として教師を捕らえたというのであれば、その担任教師が桂男の可能性があるからだ。  宿主はニュース記事をざっと見て、チャットアプリに戻った。 「C組の担任って、八房先生ですよね」  宿主はそう打った。 「あの先生、すげえ優しいって評判だったけど」  返してきたのは友人の千原ミドリという少女だ。     
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