クシミタマ③ ~二十日~

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 べとべとさんというのは、妖怪の名前だ。『べとべとさん』までが名前なので、呼ぶときは『べとべとさん』さん、とかになる。最も今のべとべとさんは、人間社会に紛れる姿として、幼い女の子の姿を取るため、『べとべとさん』ちゃん、と呼ぶことが多い。  べとべとさんは、チカラの強い妖怪とは言えず、組織に加わって侘しく生きている妖怪だ。やることも、悪戯レベルのもので、夜な夜な、人の後ろに張り付いて歩き脅かすだけ、というものだ。  最近は、べとべとさんの悪戯さえも妖怪のせいという事にならず、『ストーカー』として処理されるため、べとべとさんは弱り果てていた。 「実は、数年前ちょっとしたストーカー事件があったらしい。それには妖怪が関わっている可能性があるってことで、組織が調査をしていたんだ」 「ふぅん」  その件は我の担当していないものだ。我の担当は主に殺人やチカラのある妖怪相手の仕事が多く、ちょっとしたイザコザを起こす程度の妖怪犯罪は別の妖怪が担当している。 「その事件は、とある少女を何者かがつけまわしているという事で、警察に相談が入ったことが発端だったんだが、警察の捜査ではそれらしい人物は発見できなかったらしい。そこで『怪察』の方にも話が舞い込んだってわけだ」     
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