クシミタマ③ ~二十日~

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 怪察こと、ケーサツは警視庁の地下にあるれっきとした公安の一部で、主に妖怪事件を取り扱うための機関である。その存在は、ごく一部にしか知られておらず、警視庁に努める人間の中に入り込んだ妖怪が、空間を捻じ曲げて作った妖怪警察なのだ。  事件は警視庁に集まることから、妖怪事件の情報をいち早く集めるには、そういう機関に入り込むことも必要なのだ。たしか、責任者はぬらりひょんだったと記憶している。  どうやらその数年前に発生したストーカー事件が妖怪がらみの可能性があると、ケーサツが判断し、調査が行われたのだろう。 「その犯人候補にべとべとさんが挙がったんだが、その後の調査でべとべとさんにはアリバイがある事が分かり、結局ストーカー事件はうやむやになってしまったようだ」 「それで、今回の事件とのつながりは?」 「うん、満月や月に関することで気になる事があれば教えてくれと、妖怪たちに伝えておいたが、べとべとさんがね、その時の事件の事を思い出して教えてくれたんだ」  べとべとさんが言うには、そのアリバイの証明となったのが、友人の妖怪であるオバリヨンと共に飲み会をやっていたからと言う話だったが、その時、綺麗な満月を眺めながら酒の肴にしていたという。  つまり、そのストーカー事件も此度の事件同様に、満月の夜の話だったというのだ。     
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