クシミタマ③ ~二十日~

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 それだけなら、たまたまかもしれないと考えるが、参考資料として提出された少女の後ろ姿を撮った写真を分析したところ、どれも満月の夜の写真だったというのだ。  そして特徴的な部分として、その写真には満月は映っていなかったという。まるで、満月の出ている方角からカメラを少女の背に向けて撮ったような構図だったわけだ。 「一連の写真がすべて満月の夜のモノだったというのは、奇妙だな」 「うん。それでべとべとさんが、気にしていたのを今回伝えてくれたわけだ」 「桂男がその少女をストーカーしていたというのか?」 「桂男は、月のエイリアンであるけれど、乙女が月に祈ることが妖怪の存在価値になっている。桂男が乙女を見つめていたんじゃあべこべだね」 「……その、ストーカー事件の被害者の少女は分かっているんだろう」 「まぁね。名前は百田サクラ。現在十九歳の大学生。……そして、ここからがキモなんだが……」  わざとらしいポーズを決めて、下着姿のカリンの雲外鏡はもったいぶって見せた。  正直、うら若き少女が半裸でずっといることにあまりいい気がしなかったので、我は雲外鏡に、「早よう」と急かして睨んだ。 「……今回の殺人事件の第一発見者が、どういうわけか、その百田サクラだって話。どう? これ、きな臭いよね。あ、うさん臭いの間違いか?」     
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