クシミタマ③ ~二十日~

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 我は悩み多き少女の身体を好きに使う事に詫びを入れ、今夜、調査のために街へ繰り出そうと計画した。カリンが寝静まっての三時ごろになるだろう。  調査対象は百田サクラ。どうやら、彼女は何か鍵を握っている可能性が高い。  風呂から上がったカリンは、そのまま自室で勉学をしながら、仲間とのチャットをして、その夜を過ごした。試験は来週かららしく、カリンは若干追い込みをかけるために、長い間起きていた。  酷使した身体に鞭を打たせて申し訳ないところだが、彼女がベッドでまどろんだのを確認するとともに、我は行動を開始した。  自室の窓を開き、高く跳躍する。彼女の身体に負担を残さぬように、妖気で身を包み、その姿はまさに狐火として浮かび上がる。今日は雨が降っておらず、煩わしいものは何もない。  この時、我は先入観があったことを認めざるを得ない。  標的は桂男。イケメンであり、女性を狙うという情報から、此度の標的は、『男』だと思い込んでいたのだ。男の姿をしている妖怪だと我は決めつけてしまっていた。 「……百田サクラ」  我は雲外鏡が見せてくれた百田サクラの人相を思い返しながら、もう一つの調査対象であるカリンの学校の教師も調べなくてはならぬと並行して考えていた。  注意散漫という状況が生んだ、油断――。  百田サクラが住むアパートまで跳躍していた時だ。     
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