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こちらが動くよりも先に、あちらが速く動いた。カリンを気遣うあまりに、妖気を纏わせていたことが相手にアドバンテージを与えてしまっていた。
モモタサクラのナニカは、指先を鋭く閃かせて爪を発射した。まるで弾丸のように高速の回転が加えられすさまじい速さで撃ちだされた。
「ッ――」
我はとっさに身をひるがえし、それを躱す。抉る爪の弾丸――。
「それで娘をほじくったかッ!」
「死・ね!」
周囲に一気に妖気が膨れ上がり、己が張り巡らせた妖怪アンテナがビシビシと空気を振動させる。
組織に属しない妖怪を発見するための仕掛けだったものが、それを発動させる以前に鉢合わせをしたことで無意味な振動を伝えてくるのが苛立たしかった。
飛び道具がある相手は、そのまま指先をこちらへと向け、ツメを発射してくる。
我はそれを掌から火球を生み出し、焼却してみせると、相手は表情を険しくした。
「くそ、身体が重い……」
「なるほど、おぬしが桂男だな。月から来たせいで地球の重力に馴染んでおらんのか」
「捕まるわけにはいかない、悪いがお前をどうあっても殺すしかない」
「そうか、こちらとしては話を聞きたいんでな。できれば、穏便に捕まってほしいところだったが、残念だ」
桂男の髪がぐねりと動き、そしてそのまま蛇のようにこちらに襲い掛かって来た。
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