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焼いてしまえばいいと我は火炎を発生させて両手をかざす。掌から放たれた炎の舌が桂男の髪の毛に纏わり焼き尽くすかと思われたが、それは本物の髪の毛ではなく、桂男が化けている、妖怪の体の一部だ。妖気のチカラの差が術に勝れば、それは物ともせずにこちらに食い掛ってくる。
黒い髪の毛が我に巻き付き、身動きを封じた。四肢は捕らえられ、そのまま引きちぎらんとする力で締め上げてくる。
こちらの動きを封じたことで勝利を確信でもしたのか、桂男は我が火炎の術の中からゆっくりと姿を現して右手を構えた。手刀のように指をそろえ、こちらにその剣先を向けた。
あのままこちらに向けて突きが繰り出されればどんなパワーで肉を抉られるか分からない。
カリンの身体を傷つけられても霊魂である狐火の我を止めることはできないが、我はカリンの肉体を傷つけたくはない。それが我が動物憑きの誇りなのだ。
人との共存を求める以上、人を傷つけてはならぬ。それが我が組織の絶対の掟だ。
「使うには早かったが、喰らっておけ!」
我は事前に張り巡らせていた妖気の網が振動するのを利用し、そこに捕縛の術を発動させた。
この街を覆う結界内にまき散らしておいた我が妖気に反応し、空気が弾けるように、妖力の小爆発が発生すると、そこには極小の穴が生み出される。それは妖怪に対する強烈な引力を生み、アヤカシを吸い込むマイクロ・ブラックホールなのだ。
「ウゥッ!」
これに捕縛されれば逃げる事ができる妖怪などいない。
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