クシミタマ③ ~二十日~

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 爪の射撃は牽制射撃だったのだと思い知った。爪弾丸など比べ物にならぬスピードと力を兼ね備えた怪光線が、一瞬にして、我が身に直撃していた。 「ウグッ、んぁああぁあ――っ!?」  怪光線に直撃すると、それはスパークを放ち、我が身の妖気に纏わりついてすさまじいシビレを生み出した。  妖怪対策の妖術だ。あちらもそれなりに準備はしていたということだろう。強力な麻痺の術を身体に受け、我はその場でのたうち回った。  カリンの身を防ぐために纏っていた妖気の衣を引き裂き、無防備な少女の肉体を虐める前に、我は対抗術をくみ上げて、エイリアンの妖術から抜け出した。 「ぐうっ、はぁはぁっ……! に、逃げおったかっ……!」  流石にエイリアン妖怪だ。想像以上の実力をもっているらしい。今の状況でこうも強いというのに、満月ならばどれほどのものかとぞっとする。  どうにか麻痺の術から抜け出したが、すでに桂男はその場から完全に気配を消していた。  半身を奪うだけの損害を与えたとはいえ、相手のチカラの強大さに自分の妖気がずいぶん消耗してしまっていると分かった。 「あ、あれだけの傷を負わせたのだ……相手も同じ気持ちであると思いたいが……」  思わぬ遭遇戦で互いに驚き戸惑ったままの口火だったが、初戦は引き分けというところだろう。     
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