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我は、残る妖気を集中させ、今は引くしかないと追跡をあきらめた。これ以上はカリンの肉体に負担がかかるためだ。
相手は地球の重力に参っている様子だった。こちらも、人の身を気遣わなければならぬハンデがあるので、状況は五分五分だろうか。
「……百田サクラ……過去の事件も調べる必要があるな……」
なぜ、あの姿を模しているのか。桂男の目的が気になった。
人間に化けるなら、すでにいる人間を模倣するのは辞めたほうがいい。なぜなら、まったく同じ人間が二人いることがすでに不自然だからだ。そういった存在はドッペルゲンガーとして、真っ先にマークされる。
だから、人に化ける妖怪は、人間の姿を模倣はしない。だが、桂男は完全にサクラのコピーをしている。
それはなぜなのか……?
さらにもう一つ、胸に引っかかるものがあった。
「――あやつ、どこへ向かっていたのだ――?」
それはどれだけ考えても、その時は答えが見つからなかった。
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