クシミタマ③ ~二十日~

12/12
前へ
/241ページ
次へ
 我は、残る妖気を集中させ、今は引くしかないと追跡をあきらめた。これ以上はカリンの肉体に負担がかかるためだ。  相手は地球の重力に参っている様子だった。こちらも、人の身を気遣わなければならぬハンデがあるので、状況は五分五分だろうか。 「……百田サクラ……過去の事件も調べる必要があるな……」  なぜ、あの姿を模しているのか。桂男の目的が気になった。  人間に化けるなら、すでにいる人間を模倣するのは辞めたほうがいい。なぜなら、まったく同じ人間が二人いることがすでに不自然だからだ。そういった存在はドッペルゲンガーとして、真っ先にマークされる。  だから、人に化ける妖怪は、人間の姿を模倣はしない。だが、桂男は完全にサクラのコピーをしている。  それはなぜなのか……?  さらにもう一つ、胸に引っかかるものがあった。 「――あやつ、どこへ向かっていたのだ――?」  それはどれだけ考えても、その時は答えが見つからなかった。
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加