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クシミタマ④ ~二十二日・新月~
六月二十二日、土曜日。新月――。
土曜というのは、好都合だった。
その日、学校は午前中で終わり、来週の試験に備えるために友人たちも大人しく帰宅する流れとなる。
カリンも同様に、自宅にまっすぐ帰るところであったが、我は友人と別れたのちに、その意識を拝借させてもらった。
己の状態を確認して、我は妖力が普段よりも落ち込んでいる事を歯がゆく感じた。どうやら、先の遭遇戦のダメージはまだ癒えていないようだ。だが、もうジッとしているわけにはいかない状況になってしまった。
うかつだった我は、切り札として用意していた罠をすでに使用してしまったからだ。
そして、一度は強く感じた桂男の気配も新月の晩が近づくにつれ、徐々に感知できなくなっていったのだ。月明かりの少ないこの日こそ、桂男がもっとも、気配を殺して活動できる格好のタイミングだろうと考えていた。
もはや油断はせぬ。あちらとて、これまで以上に警戒をしているだろうが、情報網ならばこちらが上だ。
あれから、妖怪たちには百田サクラを探すように連絡を広めている。もちろん、本物の百田サクラも、桂男もどちらもマークしていた。
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