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そのやり取りでナノは通話を切った。何の疑いもないようで、とりあえずはほっとした。そして、我は颯爽と、跳躍し風の如く駆けた。駅まで行くことなど、容易いものだ。
程なくして我はカラオケにやって来た。入口のロビーまで行くと、カリンは常連のためか受付の若者がすんなりとナノが待っている部屋を教えてくれた。
207号室に入ると、ナノが歌っている最中だった。ナノはなかなか歌が上手い。カリンも実は並み以上に上手いので、我は内心歌手に向いておるのではないかとも思っている。これは親ばかならぬ宿主ばかだと、昔雲外鏡に笑われたことがあるが我は本気でそう思っている。
「あっ、早かったね~」
ナノはこちらが部屋に入ると、マイクを手に声をかけた。
音量の大きな音楽が流れる中、我はソファに腰を下ろして、ナノにひとつお辞儀をした。
途中であったカラオケの音を止め、ナノはマイクを切って同様に腰かける。
「なに、改まった感じだけど……? 勉強のこと?」
「あ、いえ。その……そうではなくて、……聞きたいことがあって。四谷ココロさんのことで」
「…………!」
ナノは驚いたような顔をしてカリンの顔を見つめ返した。明らかに動揺している様子で、また、こちらのことを意外だとも感じたらしく、困惑しているようでもあった。
「ど、どうして? どういうこと?」
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