24人が本棚に入れています
本棚に追加
「ココロちゃんのお母さんが、わたしのこと、覚えてて、それで少しお話して……。どうしてココロちゃんが吹奏楽部に入ったのか知ってるかおばさんに聞いたんだ。……ココロちゃん、吹奏楽部の顧問の先生のことが、好きだったみたいなの」
「えっ!? じゃあ、八房先生は……!?」
ココロが八房を思っていたのではなく、部の顧問に好意を寄せていたのだとすると……八房とのことは……。
「どういう事情でそうなったのか分からない。でも、ココロちゃんは、好きじゃない人に身体をもてあそばれたんだって、分かった……。八房先生が、酷い人なんだって、分かったの……」
「ナノちゃん……」
ナノはもう、嗚咽を隠しきれずに、ぼろぼろと大きな涙をこぼしていた。
それは恐らく後悔の涙だろう。彼女は、自分がもっと早くココロに手を差し伸べていれば、この事態を避ける事が出来たかもしれないと考えているのだろう。
我は、泣きじゃくる少女を抱きしめることくらいしかできなかった。彼女の記憶をいじることで、その後悔を消すこともできるが、それは恐らく、無を呼び、空虚を生むばかりとなるだろう。
ナノがその心の傷を糧とすることで、彼女が人一倍優しい少女に育つことを願った。
最初のコメントを投稿しよう!