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一霊四魂①
千原マサオは目の前に現れた男に仰天した。
恋い焦がれる百田サクラの願いを聞くため、調べまわった結果、事件の容疑者として逮捕された八房という教師が、N警察署の留置所にいることまでは突き止める事ができたため、そこへやってきた直後のことだった。
担当だと言って現れた男は、雨の日に、今隣にいるサクラに迫っていた男であり、レストランで出会ったあの男だったからだ。
マサオは、彼がサクラのストーカーなのだろうと思い込んでいたが、男は、刑事の三井ツカサと名乗り、れっきとした警部補であることが分かった。
同時に、サクラが此度あった殺人事件の第一発見者であることを、その三井の口から説明され、色々とちぐはぐに絡まっていた歯車が正常に回るような感覚がした。
やはり、今回も自分の独りよがりの勘違いだったのだと、マサオは肩を落としたが、自分の手を握るサクラが、まるで三井から隠れるように、自分に身を寄せるのを見て、彼はなけなしの男気を前に出した。
「僕たち、八房さんに面会したいんですが……」
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