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まばらに車が止まっているが、人気は妙に少なかった。まるで人払いでもされているかのような奇妙な違和感すら感じる静けさではあったが、その停車している車の一台に三井が乗っているのを見付けた。
マサオは少しばかり躊躇したが、そこまで行くと、運転席に座る三井が窓を軽く開いて、「乗って」と言った。
マサオは意を決して、後部座席にサクラと共に乗り込んだ。
「ちょっとここじゃまずいから、場所をかえさせてくれ」
そう言って、三井刑事が車を出した。マサオはちらりとサクラの顔を見たが、サクラは不安がっているのか、やけに落ち着きなく周囲を警戒するように窓の外を見ていた。
しばらく車が走ると、走行中に三井とバックミラー超しに目が合った。
「あの、教えてくれるって……」
「ああ、教えてやる。でも、こっちも知りたいことがあるんだ。ギブアンドテイクと行こうぜ」
三井はそう言って視線をサクラの方へ視線を動かした。サクラは変わらず窓の外を見ていた。
「僕らは、あの刑務所に八房さんがいるかを知りたいんですけど……」
「ああ、居るよ」
「そ、そうなんですか。できれば会いたいんですが」
「待ってよ。こっちの質問の番だ。キミ、百田さんとどういう関係なの」
「え、いや、関係と言われても……。知人、です。同じ、大学なんです」
「ふぅん、それだけ?」
「……はい……それだけです……」
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