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なんだか、『それだけ』というのがマサオは悲しくて、尻切れトンボになった。
「じゃあ、その隣の彼女が、百田サクラじゃないってことは、理解しているのか?」
「…………え?」
三井の温度を感じさせないような口調と共に、良く分からない事を聞かれたマサオはきょとんとしてしまった。だが、その隣に座っていたサクラが外を見ていた瞳をぐいと正面に動かして、露骨な反応をした。明らかに動揺していると分かる反応だった。
「百田さん……。いや、百田さんにソックリな、あなた。一体、誰なんですか?」
「……」
サクラは正面を向いたまま固まったように口を一文字に閉じた。
マサオはそんな隣の女性を見つめ、頭の混乱を整理させようと必死だった。
「え? 百田さんじゃ……ない、わけない、よね……?」
「……」
だんまりを続けるサクラそっくりの何者かはどこからどう見ても、百田サクラに瓜二つ……と言うよりもまったく同じとしか言えない。例え双子だったとしても、ここまでそっくりにはならない。だから、マサオは隣の百田サクラが違う人物だなんて考えられなかった。
「黙ってても、分かるんですよ。オレには。今日はいい匂いがしていますよ」
「に、ニオい?」
くん、と鼻を動かしても、いい匂いというのにはピンとこなかった。
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