一霊四魂①

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 三井も同様に目の前の少女の言葉を鼻で笑いそうになるが、一理あるとすれば、百田サクラの模倣という点では彼女の言い分は的を射ているのだ。あながちすべてが嘘や妄想の産物とも言えないように思えた。 「桂男よ。観念し、自白せよ。命までは取らずにおいてやるぞ」  その上からの言葉に、桂男は歯噛みしながら、この事態を抜け出す機会を探る。  相手の油断を作るしかないと、桂男は観念したように自白を始めた。 「そうだ。この姿は地球人を模倣した姿だ。私は桂男。月の妖怪だ」 「なぜその女を模倣した。我ら妖怪は、この世に住まう人間に化けるにしても、コピーはせぬぞ。瓜二つが並び立てばすぐに異常が発覚するからな」 「わ、私には、地球人の姿がすべて同じに見える。ち、違いが分からないから、一番知る人間を模倣しただけのこと」  女子高生に憑く狐火は、なるほどと合点していた。実のところ、狐火もアメリカ人の顔の区別がつかないのだ。それと似たようなものだろう。しかし、一番知る人間というのは気になった。 「一番知る人間とは? なぜ、その娘を知った?」 「三年ほど昔の話だ。とある娘が月に祈るのを聞き受けた。娘の寿命と引き換えに、その願いを叶えるのが、私の役割だ」 「それで」  まだ狐火は警戒を解かない。どうやら今日は最新の注意をもって任務に当たっているのだろう。先の襲撃の折に己を戒めたということかと桂男は内心焦りだしていた。     
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