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「……三年前、ある娘が恋路を邪魔した友人を妬み恨んだ。そして、月にこう祈った。『友人の百田サクラを苦しめたい』と。我はその願いを聞き、娘の寿命を頂いて、百田サクラをつけ回し、精神を追い込んで見せた」
「三年前の……ストーカー事件……?」
桂男の告白に、反応したのは三井だった。
脳裏に、今の話に結びつく情報が浮かんだのだ。
それは、かつて百田サクラがストーカーに遭っていたという情報に他ならない。そしてもう一つ――。恋路に恨みつらみを持った三年前の少女の話は、三井の中に鮮明に残っていた。
(オレの最初のエモノだ――)
月夜の晩、ふらふらとドラッグでもやっているのか、焦点の定まらぬ瞳で、一人の少女が現れた。その娘を見ていると、自分の中の殺意がぞくぞくと湧き上がってくるようだったのだ。
三井はそれがなぜだか分からなかったが、それは寿命を吸われた娘が、死に場所のつじつまをつけるために引き合った、奇妙な引力に他ならない。
つまり、百田サクラの友人は、桂男に願いを叶えてもらった代わりに、己の寿命を奪われて、運命の終わりの場を求めていたのだ。
そこに、三井の異常な性癖が反応し、引力を生んだ。三井はその娘を人知れずに連れ帰り、自宅に監禁しては弄んだのである。
ここに来て、三井は、自分の持つ引力の理由が分かったような気がしていた。理解よりも先に納得したような感覚だった。
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