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一霊四魂②
胎児よ、胎児よ――。
なぜ、踊る――。
母親の心が分かって――。
恐ろしいのか。
桂男は考えていた。
世界は病んでいると――。
健全とは言い難い人々の思惑が月にまで浮上し、それを目の当たりにした自分の星は、地球を病的だと判断し、その身を引くことにした。今も月は、地球から徐々に距離を取りつつある。
桂男は、悲しんだ。ああも美しい星であるというのに、重力が愛を引き寄せて、悪意が浮き上がっている状況を哀れに思ったのである。
桂男は、ただただ見ていた地球に愛着を持っていた。自分の世界が地球との縁を切ろうとすることが残念に思えた桂男は、身投げしたのだ。
地球に落ちていく月の妖怪は、単身、悲しみを纏いながら重力に引かれ落ちていくと、おぼろげに感じていた『引力』を全身に感じ、地球の生命の根っこを感じ取ることができたように思えた。
やがて、地球の大気圏を抜けた時、偶然ともいえる事だったが、四谷ココロという少女がビルの屋上から身投げをする瞬間を目にした。
彼女は堕ちながら、空に浮かぶ満月を見つめ、その胸中に渦巻いていた辛さと悲しみをその身から放っていた。
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