24人が本棚に入れています
本棚に追加
桂男は、その姿がまるで自分と同じように思えてならなかった。悲しみに墜落していく乙女から目が離せず、桂男はその、すでに死んでいるはずだった少女を救ってしまったのだ。
桂男は寿命を吸う妖怪だ。すなわち、エモノの寿命を感じ取ることもできる。そんな彼は、救った少女を見て運命を捻じ曲げてしまったと後悔した。
ほんの些細な気まぐれで、死ぬはずだった少女を救ってしまったのだ。彼女はもう、寿命が尽きていた。生きるべき運命になかったのだ。
桂男は自分の気まぐれで寿命の外側にあぶれてしまった少女に詫び、そして、彼女の願いを叶えようと誓ったのである。
満月の夜から、翌朝になり、四谷ココロは自分が身投げしたはずであるのに、自室のベッドで目を覚ましたことに驚いた。
自殺に失敗したのかと、己の腹を殴りつけたくなった少女はその手を振り上げた後に、無気力に下した。
彼女は、愛する人とは別の男の子を孕んでしまっていた。それが何事よりも彼女の全てを破壊したのである。
彼女はもう一度自殺を決意した。
そのまま学校へ行くと、普段と変わらぬ一日が過ぎていき、自分が自殺した事自体誰も気が付いていないようだった。ビルの上から身投げしたという事実そのものが消え失せていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!