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「好きな人……好きなもの……。好きになることができるのって、うらやましいな……」
思わず零れたその言葉は、アタシの本音だっただろう。
夢中になれるものを見付けている人は活き活きとしていた。明確にそれに向けて前進していく姿がうらやましかった。
ゴールが用意されていることのなんと心地のいいことか。
だが、アタシはどこがゴールなのかをまだ発見できていない。四方八方に広がるアタシの道は、どっちが自分のゴールなのか見えずに真っ暗闇なのだ。
「アタシは、何ができるんだろう。何が、したいんだろう……。何が好きなんだろ……」
ぼんやりと物思いに沈んでいくアタシはいつの間にかまどろみだしていた。
眠気に負けてうとうとと夢と現実のはざまを行ったり来たりしていたら、あっという間に時間は過ぎていた。
いつのまにか、隣の部屋から音楽が聞こえていた。アニキが自室で音楽を聴いているらしい。
アタシはベッドから起き上がり、台所にいって冷たいお茶を一杯だけ飲んだ。
そして、切り替えをするように体の中身を流していく。
「勉強しよ」
軽く伸びをして気を入れなおすとアタシはそのまま自室の戻り、机に向かった。
時折震えるスマホを見て、仲間と駄弁りながら勉強したら不思議と捗る。
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