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ココロが通報しない事を、都合よく考えた八房は、その後も何度かココロに迫ったが、ココロは瞳を閉ざし、耳をふさぎ、呼吸を止めてその時を凌いでいた。
彼女の通学する理由は、もう部活の顧問のためだけでしかなかった。
だが、その部活も八房との事を思い返せば、顧問の顔をきちんと見る事ができなくなった。そして、トランペット演奏にもそれは現れて、しまいには、その顧問からきつく叱られてしまう事になったのだ。
そんな日々の中、更に最悪の事態が発覚した。
最近体調がすぐれないと思っていたココロは、もしやと思って妊娠検査薬を使ったのだ。結果は陽性だった。
妊娠しているという事が発覚したのだ。
そして、打ちのめされたココロは身投げを決意した。
だが、どういうわけか、彼女は死なずに自分の部屋で目覚めた。
きっと、自分の決意が弱かったせいだと、ココロはもう一度自殺するために、決意を固めた。
その日、部活が終わり、顧問に叱られたココロを部員の友人が慰めるようなやり取りを電話でしてから、ココロは動き出した。
自宅には向かわず、もう一度カラオケのビルへと向かったのである。
そして、屋上にたどり着いた時、彼女はそこに先客がいることに驚いた。
屋上には、見知らぬ女性が揺らめくような不確かな存在感でそこにいたのである。
「……あ、あの」
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