24人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前は模造品ではない。お前はお前だ」
「そういう意味じゃないよ。……僕は決めたことをやり通したいと思ったんだよ。そうじゃないと、どこまで行っても、僕は空気だ」
マサオの決意は、正しいとか間違いとかを通り過ぎた先のものにあった。
自らを変えたいと考えていた彼は、結局自分の行動が空回りになっていたとしても、それが自分の起こした行動である以上、責任があると考えていた。
きっと、自分が何かの行動を起こさなければ、魂は社会とつながらずに、宙ぶらりんのままのような気がしたのである。
行動すること。それがどんなにちっぽけでも、己が動くことで、社会との接点が摩擦を生み、人の流れにうねりを作る。
そうして、繰り広げられる『世の中というドラマの登場人物』なのだと、マサオは訴えたかったのだ。
無駄な行為など、この世にはない。間違った行動だったとしても、それには意味が生まれ、社会に影響を与えるはずだ。自分は社会の一員なのだという自覚が、そうありたいという青臭さが、桂男を救ったのである。
「この世は……矛盾だらけだ」
「……そうかもしれない」
桂男は、目の前の男の言葉に、いよいよ分からなくなってきた。
最初のコメントを投稿しよう!