一霊四魂②

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「なぜだ。毒性を振りまきながら、なぜ社会を肯定する。否定する人間ばかりの世の中で、それは奇妙でしかない。お前は社会に対し、順応したいと思いながら、人の総意からは外れている」 「そんな、難しいこと言われても、わかんねー。生きてるだけで精一杯だから」  生きるだけで精いっぱいという言葉に、桂男はピクリと反応した。気に入らない言葉だと感じたのだ。 「生れ落ちる事を嫌われた者もいる。こんな世界はつらくはないか」  四谷ココロの中にいた、生命のカケラのようなそんな存在すら、世界に拒絶されたのだ。生れ落ちた者は、生きているだけで精いっぱいなどと言うのは贅沢だと鼻白んだ。 「それが、八房を殺す理由なのか?」 「違う。八房の死はココロの願いだ。私は妖怪としての在り様で動いているに過ぎない」  マサオは、もう割り切った。この目の前の存在は、確かに百田サクラではないとはっきりと分かった。だが、それでも、このエイリアンに関わった事は事実であり、自分の生み出した行動の片鱗でもある。  「……在り様?」 「誇りである」 「プライドか……。なら、同じだよ。僕もあんたも」 「八房殺しを手伝うのか?」 「いいや、もうそれは無しだ。エイリアンには、八房を殺させたくない」 「なに?」     
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